シナプス後肥厚部(post synaptic density:PSD)特異的モノクローナル抗体を作製し、複数の新規PSD蛋白質のクローニングに成功した。その中の1つ、PSD-Zip45はN末側にEVH1、C末側にロイシンジッパードメインを有していた。細胞内での発現実験などからPSD-Zip45はN末側で代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR)に結合し、ロイシンジッパーを介してmGluRをクラスター形成させることを明らかにした。他の結合蛋白を検索した結果、PSD-Zip45はNMDA受容体アンカー蛋白質や細胞骨格蛋白質など複数の蛋白質に結合することを見いだし、シナプスの分子構築において中心的な役割を果たしている可能性を示した。 一方、PSD特異的モノクローナル抗体を用いて別にクローニングした新規蛋白質PSD-Zip70は、全長601アミノ酸、SDS-PAGE上の分子量が70kDaで、C末端側にロイシンジッパーモチーフを有しているが、その他に特徴的な配列は見い出せない。ノーザンブロット解析の結果、PSD-Zip70は神経特異的に発生の初期段階から発現していることが判明した。yeast two-hybrid法を用いて結合因子の探索を行ったところ、複数の蛋白質がPSD-Zip70に結合することが明らかとなった。その中のいくつかはエンドサイトーシス関連蛋白であり、PSD-Zip70はエンドサイトーシスに関わる分子である可能性が示唆された。
|