研究概要 |
脳科学と関連して,動的信号処理素子としての単一カオスニューロン素子の有する機能を,動的応答特性という点から数値シミュレーションを用い研究している.用いる入力信号として,平均スパイク間隔は一定であるがその間隔分布に構造があるような6種類の異なる確率的入力を用いる.これまでに得られた結果は以下の通りである. 1.出力値の長時間観測から,非周期入力に対しては複雑な応答特性を示す.但し,ダイナミックスの複雑さの指標の一つであるリヤプノフ指数は負であり,カオスダイナミックスとは異なる複雑な応答特性である. 2.リヤプノフ指数の値は,異なるマルコフ入力に対して有意に異なる. 3.相対不応性の働きにより,単一カオスニューロン素子は動的サンプリングを行なうことができる. 4.出力のスパイク間隔の平均値には入力スパイク間隔の時間構造の違いが反映されない. 5.出力値の時間遅れを考慮した2次元空間での特徴抽出により(リターンプロット),入力によって点の位置とその密度が有意義に異なる.このことは,入力スパイク間隔の時間構造の違いが,出力のスパイク間隔や出力値に反映されていることを意味する. 6.リターンプロットによって引き出された違いは,ノイズに対する頑健さそして入力の違いに対する敏感性を有する. 以上より,単一カオスニューロンの動的信号処理素子としての能力は,(i)動的サンプリングによる特徴抽出,(ii)入力スパイクの時間構造の違いに対する敏感性,及び,(iii)ノイズに対する頑健さである.
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