脳の高次機能のひとつであるワーキング・メモリを研究するため、大脳皮質前頭前野神経回路のモデルを構築した。このモデルを用いたコンピュータ・シミュレーション法により、ワーキング・メモリに関連する大脳皮質前頭前野神経回路のダイナミクスを調べた。すなわち、モデル回路内で、ワーキング・メモリが形成され、維持されることを示した。なお、ここで使用したモデルは発火頻度型ニューロン・モデルである。さらに、大脳皮質前頭前野ニューロンのダイナミクスおよび発火パターンを詳細に調べるために、より生物学的に忠実な統合発火型ニューロンモデルを用いた前頭前野神経回路モデルを構築し、コンピュータ・シミュレーションを行った。ワーキング・メモリに特異的な遅延期間における活動がいくつかのパラメータによって支配されていることを示すデータが得られた。とくに局所抑制の役割に関しては、当研究によって新たな知見が得られた。さらに現在、米国Yale大学での実験結果との比較検討を通して、より詳細な研究が現在進行中である。
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