研究概要 |
線条体ではドーパミンにより制御される蛋白質DARPP-32(Dopamine-and cAMP-regulated phosphoprotein of Mr32kDa)が選択的に発現している。Thr34残基がプロテインキナーゼA(PKA)によりリン酸化されたDARPP-32は、プロテインホスファターゼ1(PP-1)と結合しPP-1活性を抑制する。ドーパミンなどの神経伝達物質は、DARPP-32リン酸化レベルおよびPP-1活性を調節することにより、イオンチャンネルやNa^+,K^+-ATPaseの機能、さらには神経細胞の興奮性をコントロールしている。ドーパミンD1/D2レセプターによるDARPP-32/Thr34残基リン酸化調節の検討で、D1レセプター刺激によりPKAによるDARPP-32リン酸化は促進されるが、D2レセプター刺激ではカルシニューリンによるDARPP-32脱リン酸化が促進され、D1レセプターとD2レセプターは拮抗的に作用することを報告した(J.Neurosci.17:8147-55,1997)。線条体神経細胞には、D1レセプターを主として発現する線条体-黒質神経路神経細胞とD2レセプターを主として発現する線条体-淡蒼球神経路神経細胞の2種類が存在する。D1/D2レセプターは異なる神経細胞上に発現しおり、D1/D2レセプター相互作用のメカニズムは明らかでない。私たちは、ギャップ結合抑制物質がDARPP-32リン酸化調整におけるD1/D2レセプター相互作用を抑制するという結果を得た。この結果は、線条体神経細胞間のコミュニケーション、特に細胞内情報伝達系の相互作用にギャップ結合が関与することを示唆している。
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