大脳皮質の非錐体細胞は、その電気生理学的な特徴から2つのグループ(FS(fast-spiking)細胞と非FS細胞)に分類できる。それらはさらに形態的な特徴からサブグループ(ダブルブーケ(DB)細胞、マルチノッチ(MA)細胞等)に分類できる。また、これらのサブグループは、神経化学物質も特有のものを発現する。例えば、FS細胞はカルシウム結合蛋白であるparvalbuminを、DB細胞は神経ペプチドであるvasoactive intestinal polypeptideやcorticotropin releasing factor等を、またMA細胞は神経ペプチドであるsomatostatinを発現している。私は、ラット前頭皮質スライスから電気生理学的に同定・ラベルした非錐体細胞の神経終末を電子顕微鏡で観察し、その連続超薄切片から立体像を再構築し解析した。FS細胞とDB細胞の神経終末のターゲットは細胞体、樹状突起とまれに棘突起であったが、MA細胞はより細い樹状突起と棘突起の頭部であった。また、上記三種類の非錐体細胞の神経終末が形成するシナプス結合部位の面積は、シナプスを受ける樹状突起・棘突起の太さに比例して増加したが、その割合に関しては、サブグループ間で異なっていた。以上のことから、これらのサブグループは、大脳皮質神経回路内で、おそらく機能的に異なる群であると考えられる。従って、シナプス後細胞への抑制作用は異なると推測される。
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