大脳皮質の重要な入力は、他の皮質と視床からの興奮性投射である。この他に、大脳基底部からのアセチルコリン、青斑核からのノルアドレナリン、縫線核からのセロトニンなどの投射があるが、これらは皮質の活動状態を調節している。これらの伝達物質は錐体細胞に直接作用するだけでなく、GABA細胞を介して間接的に錐体細胞に影響すると考えられる。アセチルコリンのアナログであるカルバコールや、ムスカリンが、GABA作働性シナプス伝達やGABA細胞にどのような影響があるかを脳切片標本で調べた。カルバコールやムスカリンを作用させると、錐体細胞、GABA細胞両方のGABA作働性抑制性電流の頻度と振幅が増大した。この増大は、テトロドトキシンやアトロピンおよびピレンゼピンで抑えられたので、1型のムスカリン受容体を介して、GABA細胞が興奮して錐体細胞やGABA細胞に抑制性シナプス電流が引き起こされたと考えられる。カルバコールやムスカリンをある程度持続的に脳切片標本にかけると、抑制性シナプス電流の増大のパターンには、持続的に増えているのと、0.1から0.3ヘルツの周期でバースト状に上昇するものの二種類があることがわかった。このうち周期的に増大する抑制性電流については、同一切片上の2つの細胞から同時に記録された場合には、低周波のバーストリズムは同期していたが、個々の抑制性電流は、同期していないことが多かった。この抑制性シナプス電流の増大パターンに対応して発火するGABA細胞を検索した。その結果、パルブアルミン陽性のFS(fast-spiking)細胞は、カルバコールやムスカリンによって発火せず、持続的に発火したりや、低周波で周期的に発火頻度を増大するものは、non-FS細胞の中にあることがわかった。アセチルコリン投射系は、GABA介在細胞のサブタイプごとに違う作用をおよぼし、局所回路の興奮性や周期的活動を調節していると考えられる。
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