研究課題
我々は、アフリカツメガエル卵母細胞を発現系とする実験で、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)がグルタミン酸のみならず細胞外Ca^<2+>濃度の上昇によっても活性化されることを見い出し、またその感受性を決定している一次構造の基盤を同定した。しかし、Ca^<2+>は、神経伝達物質と異なり恒常的に細胞外液に存在するので、代謝型グルタミン酸受容体の持つ細胞外カルシウム感知機能の生理的意義は必ずしも明確ではない。そこで、mGluR1の持つ細胞外Ca^<2+>感知機能の脳における生理的意義を理解するために、in vitro遺伝子発現系としてCHO細胞を用いて、mGluR1に対する細胞外Ca^<2+>の恒常的刺激によりひきおこされている細胞応答を明らかにする実験を行い、以下の知見を得た。(1)adenylate cyclase-cAMP-protein kinase A-MAP kinase kinase-MAP kinase系の活性化があること。(2)mGluR1を発現しているCHO細胞では、細胞内cAMP濃度の基礎値が高いこと。(3)cAMP濃度の上昇は、膜分画のみを用いた実験でも観察され、その上昇はGs蛋白に対する抗体でブロックされること。以上の結果から、CHO細胞において、mGluR1は(よく知られている)Gq蛋白のみならずGs蛋白にも直接作用すること、mGluR1に対する細胞外Ca^<2+>の恒常的刺激によりGs系の基礎活性が高まっていることが明らかになった。また、グルタミン酸と細胞外Ca^<2+>の組み合わせ投与の実験により、細胞外Ca^<2+>に対する感受性を持つことがグルタミン酸に対する応答の持続時間の延長を引き起こし作用を増強させていることも明かになった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)