研究概要 |
我々は、ジストロフィン結合蛋白質の一つであるalpha1-シントロフィンの変異マウスを作成し、骨格筋でalpha1-シストロフィンが、神経型NO合成酵素nNOS(Kameya et al.1999)および水チャンネルを担うAquaporin-4(Yokota et al.2000)と骨格筋形質膜直下で、分子間連関していることをin vivoで証明した。浸透圧の変化に対する筋線維の抵抗性を検討すると、変異筋では、外液のNaClの濃度変化に対し、その後の筋収縮の回復が遅れたが、スクロースを用いた実験では、この差はなく、alpha1-シントロフィンがさらに他のイオンチャンネルを膜に局在させている可能性が示唆された。次に、骨格筋から単一筋線維を単離し、浸透圧ショックをかけると、alpha1-シントロフィン欠損筋では、野生型のマウスの筋線維より、浸透圧変化に対して、変性する割合が有為に低いことがわかり、二次的にalpha1-シントロフィンを欠くmdxマウスでも同様な結果が認められた。又、alpha-シントロフィン及びその下流に位置する分子群は筋再生過程で、筋収縮の制御に深く関係していることが、cardiotoxinを用いた再生実験で明らかになった。我々は、さらに変異マウスを用いて、alpha1-シントロフィンが、脳のアストロサイトfeetにAquaporin-4を局在させていることを明らかにした(Yokota et al.,2000)。アストロサイトでのAquaporin-4の役割に関しては、最近Aquaporin-4の発現を欠くノックアウトマウスを用いた実験的脳浮腫の実験で、逆に生存率が高いことが示されている。(Nat Med 6:159-163,2000)。従って、alpha1-シントロフィンが、生理的および病的状況で水やイオンの出入りに重要なchannelを、血液脳関門に局在させていることを示す。今後は、alpha1-シントロフィンとAquaporin-4の分子間連関が課題である。
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