研究概要 |
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)では知的障害を見ることがあるが病理学的には特異的な異常はなく、中枢神経障害の分子機構は明らかではない。ジストロフィン結合タンパク質の一つであるalpha1-syntrophinは、ジストロフィンの欠損に伴って発現が低下しているが、PDZドメインを介してチャンネル及びレセプター分子と分子間相互作用をしている可能性がある。我々は同分子のノックアウトマウスを作製し、これまでにalphal-syntrophinがnNOSを筋形質膜にアンカーリングしている事(Kameya S et al.,J.Biol.Chem.274:2193-2200,1999)を示した。次に同ノックアウトマウスを用い、骨格筋形質膜と共に脳アストロサイト足突起やグリアリミタンスにおいてalpha1-syntrophinが水チャネルのアクアポリン4を形質膜に局在化させていることを明らかにした。(Yokota T et al.,Proc J Acad 76:22-27,2000)さらにこれらの組織においては、アクアポリン4を構成するorthogonal array構造が減少していた。また、その生理学的な影響を検討するため骨格筋に対する浸透圧ショックの影響を検討したところ、単離した骨格筋組織の浸透圧ショック後の収縮張力が野生型よりも低下していた。これは、これまでジストロフィン欠損による筋ジストロフィーの発症機序において考えられてきた機械的な膜の障害説に対し新たな視点を与えるものである。更に、神経筋接合部(NMJ)においてalpha1-syntrophinが特に強く発現していることから、同ノックアウトマウスのNMJの構造やジストロフィン結合タンパク質の発現について検討した。同ノックアウトマウスではNMJのgutter及びfoldの構造が浅く、さらにfoldの数の減少が見られた。これらの異常は、ジストロフィン及びそのホモログタンパク質であるユートロフィンの局在の異常を伴っていた。これらのことより、alpha1-syntrophinが神経筋接合部におけるシナプス形成に関与していることが示唆された
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