研究概要 |
本特定領域研究は,新世紀に向けて,新しい自然科学の飛躍的発展に寄与する重要機能性分子を,重要かつ不可思議な未解明生物現象に着目して発見し,世に示すところに特徴がある.本年度は4つの研究項目を設定,11月に名古屋でコンファランスを開催し,本特定領域研究の計画研究予定者による話題提供と討論を行った.以下に研究代表者らの取組について述べる. 1)北海道のオオアシトガリネズミSorex unguiculatus顎下腺の含水エタノール抽出物にN型カルシウムチャネル開口作用を示す物質の存在が明らかになった.これが麻酔作用の活性本体であると予想されるので分離・精製を進め構造を明らかにしていきたい.また,北米に生息するブラリナトガリネズミBlarina brevicaudaの唾液は有毒であり,自分より大きなネズミを殺すほどその毒性は強い.そこで,北米のトガリネズミについても採集を行い,分離・精製について進めている. 2)沖縄の大型の2枚貝マベガイPteria penguinの貝柱,内蔵,外套膜についてマウスに対する急性毒性を調べたところ,内蔵と外套膜に強い毒性が見られた.そこで,これを指標に分離・精製を進め,活性物質の単離を目指している.各種クロマトグラフの挙動から,活性物質は塩基性物質であると予想される. 3)オニヒトデAcanthaster planciは,異様な姿をしたヒトデの一種で,わが国のみならずインド洋,太平洋各地から,南アフリカ,紅海にかけて広く分布している.沖縄では周期的に異常発生したオニヒトデによるサンゴの食害や,人間に対する刺害が深刻な問題であるが,効果的な駆除法は開発されていない.ラッパウニの内臓にオニヒトデが摂餌刺激を受けることを見いだしたので,この活性本体を明らかにできれば,オニヒトデを呼び寄せて一網打尽にするという効果的な駆除法を確立することができる.これまでに水槽を用いた活性試験法を確立し,ラッパウニ内蔵抽出物の脂溶性部に摂餌刺激物質の存在を確認した.さらに分離・精製を進め活性本体の解明を目指したい.
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