がんの診断と治療

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11180101
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 中村 祐輔 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70217909)
• 研究分担者: 上田 龍三 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (20142169) ; 斎藤 泉 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70158913) ; 珠玖 洋 三重大学, 医学部, 教授 (80154194) ; 上原 至雅 国立感染症研究所, 生物活性物質部, 部長(研究職) (50160213) ; 平岡 真寛 京都大学, 医学研究科, 教授 (70173218)
• キーワード: がんの個性診断 / 免疫療法 / 遺伝子治療 / 分子標的治療 / 放射線療法 / 抗癌剤

研究概要

がんの診断と治療に関する基礎的・基盤的な幅広い研究の推進を目的とし、研究を推進した。診断については、分子レベルで、それぞれの患者の特性やがんの「個性」を診断して最小限の副作用で最大限の効果が期待できるような的確な治療指針を提供することを目指した。その結果、癌細胞におこった遺伝子増幅を解析した結果、抗癌薬耐性や放射線治療抵抗性に関与するアポトーシスインヒビターの同定など「がんの個性診断」の基礎研究が進んでいる。治療については、分子細胞生物学や免疫学・発生工学などの成果によってがん化の分子機構やがんに対する免疫の仕組みが明らかになってきていることなどを踏まえた形で、これまでの免疫療法・化学療法・放射線療法・分子標的治療・遺伝子治療の5分野の基礎研究をさらに発展させた。免疫分野では、抗原提示能の高い樹状細胞を誘導する研究などが進んだことにより、それらを利用した癌免疫療法の基盤研究が急速に進展している。癌治療のための分子標的研究に関しては、幅広い範囲での分子の同定が進みつつあり、これらを利用した治療法やこれらを標的とする治療薬の開発が行われている。新規抗癌剤の探索に関しても有望な物質が見いだされ、臨床試験に入っているものもある。遺伝子治療分野では細胞特異的に高度に発現する機能や細胞特異的に感染する機構を持つアデノウイルスベクターの改良が進み、動物実験でもその有望性が示されつつある。放射線治療についても、感受性に関与する遺伝子研究や感受性を規定する遺伝子に関する研究が進み、それらの情報が放射線治療の効率を高める治療法への応用につながりつつある。

研究成果

• [文献書誌] Matsuda K, Yoshida K, Taya Y, Nakamura K, Nakamura Y, et al.: "p53AIP1 regulates the mitochondrial apoptotic pathway"Cancer Research. 62. 2883-2889 (2002)
• [文献書誌] Ikuta Y, Katayama N, Wang L, Okugawa T, et al.: "Presentation of a major histocompatibility complex class 1-binding peptide by monocyte-derived dendritic cells incorporating hydrophobized polysaccharide-truncated HER2 protein complex : implications for a polyvalent immuno-cell therapy"Blood. 99. 3717-3724 (2002)
• [文献書誌] Yamamoto H, Ochiya T, Takeshita F, Toriyama-Baba H, et al.: "Enhanced skin carcinogenesis in cyclin D1-conditional transgenic mice : cyclin D1 alters keratinocyte response to calcium-induced terminal differentiation"Cancer Research. 62. 1641-1647 (2002)
• [文献書誌] Ito M, Iida S, Inagaki H, Tsuboi K, Komatsu H, Yamaguchi M, et al.: "MUM1/IRF4 expression is an unfavorable prognostic factor in B-cell chronic lymphocytic leukemia (CLL)/small lymahocytic lymphoma(SLL)"Jpn. J. Cancer Res.. 93. 685-694 (2002)
• [文献書誌] Harada H, Hiraka M, Kizaka-Kondoh S: "Antitumor Effect of TAT-Oxygen-dependent Degradation-Caspase-3 Fusion Protein Specifically Stabilized and Activated in Hypoxic Tumor Cells"Cancer Research. 62. 2013-2018 (2002)
• [文献書誌] Fukazawa H, Noguchi K, Murakami Y, Uehara Y: "MEK Inhibitors restore anoikis sensitivity in human breast cancer cell lines with a constitutively activated ERK pathway"Mol. Cancer Therap.. 1. 303-309 (2002)