研究課題
病原体の攻撃に対して、植物が抵抗性を発揮して、感染を阻止する分子機構を解明して、耐病性分子育種への指針を示すことを目的とした。本領域は、1 植物が病原微生物を認識し、シグナル伝達系を通じて、種々の防御応答が発現する一連の分子機構の解明と 2 病原微生物が宿主因子と相互作用して発現させる病原性や宿主の抵抗性の分子機構の解明を行っている。多様な植物に多様な病原微生物が存在しており、その組み合わせによって、発現する病原性と防御応答も一つではない。しかし様々な組み合わせにおいても分子機構を解明する過程で共通の防御応答が見えてくると確信している。本特定領域では、こうした多様な側面を研究する研究者が一同に会して最新の情報を共有することで、防御応答のいくつかの本質を見極められることが重要である。このために病原体認識の初期応答から宿主の防御応答の発現まで多様な側面をカバーするよう計画研究を組織した。合同研究会議2回、若手研究会、公開シンポジウムを行った。またニュースレター11から13号を刊行した防御応答を司る植物遺伝子や、病原体植物相互作用の重要な分子がいくつか単離されたかあるいは単離されつつある。主な成果は以下のようである。1 エチレンを介した防御応答に関して転写因子EIN3がユビキチン分解系で制御を受けていることを明らかにして、Natureに発表した。2 傷では誘導されず、ジャガイモと疫病菌の組み合わせてのみ発現するプロモーターを同定した。このプロモーター下流に抵抗性反応を誘導する遺伝子を組み込み、形質転換して、疫病抵抗性ジャガイモの作製に成功した。3 リンゴ斑点落葉病菌が分泌する宿主特的毒素に感受性のリンゴでは、シャペロニンアルファサブユニットが関係していることが分かった。4 細胞壁で防御応答を司るNTPase活性化に無機リン酸依存性の制御があることが明らかになった。詳細な解析からリン酸によって活性化させる新たな情報伝達系を提唱した。
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