研究課題
本研究では、GAME-Tibet予備観測(1997年8月〜9月)、集中観測(1998年5月〜9月)によって得られた、チベット高原陸面エネルギー・水循環過程に関わる観測データを整理・アーカイブし、そのデータセットを用いて、凍土水文過程、降水過程、陸水の同位体分布等の各プロセスを解析し、それぞれを組み合わせて、土壌水分、流出、蒸発散等の凍土水文過程の状態量やフラックスの時空間分布を算定できるモデルを構築することを目的としている。さらに、両観測で設置された自動気象・土壌水分観測機器を補修・維持して、継続観測(1998年9月〜1999年9月)を実施し、短期間の観測データだけでは解明できない凍土水文過程の季節サイクルや年々変動、およびその地域性を明らかにすることも重要な目的である。上記の目的を達成するため、平成11年度は物理量データセットを作成し、下記研究を実施した。1.凍土水文過程:土壌水分・地温プロファイルの、季節・年々変動特性、高原南北スケールおよびメスケールで空間分布特性、斜面が凍土融解過程に及ぼす影響を明らかにした。2.降水過程:メソスケール領域の降水の時空間分布特性を把握するとともに、降水機構を解析した。また、雨量計ネットワークデータより、降水量の明瞭な緯度依存性が確認されたのに対して、標高依存性は確認できなかった。降水の同位体分析からは、他地域と比較して極めて高いD値と、降水期間のD値の上昇傾向が明らかになり、同位体輸送のメカニズムを含んだGCMを用いたメカニズムの初期解析結果が示された。3.衛星リモートセンシング:TRMMマイクロ波放射計(TMI)による土壌水分、地温、植生水分量、積雪、陸域降水算定のアルゴリズムが開発され、地上観測データを用いた検証の結果、その妥当性が示された。
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