研究課題
特定領域研究(B)
本研究は、国際学術等共同研究により、1998年にチベット高原上で実施された集中観測の結果を解析して、高原上の種々の気象要素、大気境界層の構造、乱流特性、陸面から大気へのエネルギー・水輸送などについて、その空間分布、日変化の特徴、アジアモンスーン開始前から終息までの間の季節変化を明らかにしていくこと、さらに、「チベット高原陸面エネルギー・水循環過程(代表者:小池俊雄)」研究班の成果と併せて、大気陸面相互作用の解明と予報的アルゴリズム確立にむけた研究を行うことを目的として実施された。また、これらのデータ解析研究と平行して、自動気象観測装置を用いた観測を継続し、大気陸面過程の年々変動の解明を目指した。集中観測の解析では、高原の特徴を反映した放射収支、モンスーンの進行とともに陸面から大気へのエネルギー輸送の形態が顕熱主体から潜熱主体に変化する様子が実測で明らかになった。地表面熱収支の解析では、フラックスのインバランスが見られた。これに関して、乱流計測上の問題、観測要素の代表性の問題(Footprint問題)、組織的な構造の影響などの検討が行われたが、完全な解決には至らず今後の課題として残った。メソスケールの水循環に関しては、ゾンデデータ解析と数値実験により、高原上の地形の影響により、日中から午後にかけて山岳地域に水蒸気が輸送され可降水量が増加する日変化のメカニズムが解明された。継続観測では、これまで観測データが少なかった地域で通算6年間の観測データが得られた。また、バルク法により1998年から200年までの4年間の地表面フラックス変動(アムド)が算出された。特に、春先の地表面加熱に大きな年々差があることがわかった。中国気象局のルーチン観測データから地表面フラックスを算出する方法も開発され、チベット高原とその周辺域にある観測地点での地表面フラックスが算出され、その地域差や季節変動が明らかにされた。
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