研究課題/領域番号 |
11202202
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川本 辰男 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教授 (80153021)
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研究分担者 |
上田 郁夫 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助手 (70292836)
佐伯 学行 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助手 (70282506)
森 俊則 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教授 (90220011)
塚本 俊夫 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (40217287)
野崎 光昭 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (10156193)
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キーワード | 電子・陽電子衝突 / LEP / OPAL / 鉛ガラスカロリメタ / 標準理論 / Wボソン / Zボソン / ヒッグス粒子 |
研究概要 |
平成12年度はLEPの運転が行なわれる最終年度であり、その衝突エネルギーを極限まで高める努力がなされた。運転中、ビーム電流が減った後にエネルギーを数GeV上げる、ミニ・ランプという方法が使われ、209GeVの最高衝突エネルギーを得た。当初の予定では、9月末に運転を終了するはずだったが、ヒッグス粒子発見の兆候があったため、これをより詳しく調べるために11月2日まで運転を延長した。その結果、衝突エネルギーが約205GeV付近で140 1/pb、約207GeV付近で140 1/pbというルミノシティーを得た。この間OPAL測定器も順調に稼働し、92%という高い効率で電子陽電子衝突事象のデータ収集を行なった。 W粒子を大量に生成し、その質量、生成断面積、ゲージ・カップリングなどの性質を調べ、標準模型の精密検証を行ない、さらにその測定値からヒッグス粒子の質量を間接的に予測したり、新物理へのヒントを探ることはLEP-IIの重要な研究テーマの1つである。今年度は、OPALで約4000のW対生成事象を観測し、LEP-II全体を通して約12000ものW対生成事象のデータを収集した。今年度のデータから得られたより高い衝突エネルギーでのW対生成断面積は、既に夏と冬の国際会議などで報告が行なわれた。Wボソンの質量は、平成11年度までのデータから0.06%の精度で決定され、その誤差の内分けは、統計誤差が0.04%、系統誤差が0.05%と系統誤差が統計誤差を上回った。このため、系統誤差が発生する主な原因である、ハドロニゼーション、ボーズ・アインシュタイン効果、カラー・リコネクションなどに関する研究を重点的に行ない、系統誤差を最小にする努力をした。 ZやWボソン、光子を通じてフェルミオンが2個ないし4個生成される過程は多くの興味深い物理を含んでいる。標準理論で期待される全ての過程を網羅し、その精密測定と理論の預言を比較し新しいエネルギーでも標準理論がよく成り立っていることを確認し、これを越えるクォーク・レプトンの複合粒子理論などに厳しい制限を加えた。
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