研究概要 |
平成14年度に羊八井に設置した空気シャワー観測装置に200台の検出器の増設を行い、当初目標のTibet-IIIアレーが完成した。現在、本装置は順調に連続稼動している。約1.5kHzでデータの取得を行っており、あわせてすでに収集した観測データの解析を精力的に進めている。また,観測データから精度よく一次宇宙線全粒子スペクトルを求めるため,観測データと厳密に比較可能なシミュレーションデータベースの作成を行っている。このデータベースの作成はCOSMOS及びEPICSコードを用いて観測装置を込みにしたフル・シミュレーションによる計算で作成しており,観測データのシングル粒子の定義をシミュレーションで厳密に再現しデータベース作成に取り入れている。平成15年3月の日本物理学会でスペクトルに関する予備的結果の報告を行った。また、一次宇宙線中の特に陽子成分頻度を得るため,富士・カンパラEC実験ファミリー・データとCOSM0S ad-hocモデル及びCORSIKA QGSJETモデルを用いたシミュレーションの結果に人工ニューラル・ネットワーク(ANN)を適用し,これまでにない新しい方法でファミリーの解析を行い以下の結果を得て学会誌に発表した。a)COSMOS ad-hocモデルとCORSIKA QGSJETモデルによる結果がよく一致する,b)両モデルともにEC実験で捕らえたファミリーをよく再現する,c)一次宇宙線中の陽子成分の頻度は,(5.5±1.5)×10^{-14}(m^{-2}s^{-1}sr^{-1}GeV^{-1})at2×10^{15}eVである。この結果は,Tibet burst arrayで求めたものとコンシステントであり,knee領域の一次宇宙線組成が重核優勢であることを示す。
|