海底メタンハイドレート層の研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11204203
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 松本 良 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40011762)
• 研究分担者: 松田 博貴 熊本大学, 理学部, 助教授 (80274687) ; 徳永 朋祥 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (70237072) ; 芦 寿一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40251409) ; 木下 正高 東海大学, 海洋学部, 助教授 (50225009) ; 蒲生 俊敬 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70143550)
• キーワード: メタンハイドレート / クリーンエネルギー / 国際深海掘削計画 / 大量絶滅 / 斜面崩壊 / 地球温暖化 / 南海トラフ

研究概要

ガスハイドレートは水とメタンからなる氷状の固体物質であり、メタンガスの容積倍率(単位堆積当たりのメタン含有量)は164倍である。近年、大陸周辺、深度数100〜数1000メートルの斜面堆積物中に広分布していることが分かり、新しい天然ガス資源として注目を集めている。ガスハイドレートは深海底のような低温、高圧条件で安定に存在するが、温度上昇(=温暖化)や圧力の低下(=海水面の低下)が起こると不安定になり、大量のガスハイドレートが短時間で分解する事が予想される。大量分解の結果、堆積物中に大量のメタンガスと水とが放出され堆積物が不安定化、斜面崩壊を引き起こす可能性が指摘される。海水に放出されたメタンは海洋を貧酸素化し、海洋中層、表層の生物群に致命的なダメージを与える。メタンは二酸化炭素の数10倍という温室効果があり、メタンの放出は地球温暖を促進する要因となる。このように、ガスハイドレートは次世代のクリーンエネルギーという側面を持つ一方、地球環境に大きなインパクトを与える潜在的驚異であるといえる。ガスハイドレートの影響を評価するには、海洋におけるメタンフラックス、堆積物中のガスハイドレート量、堆積物深部におけるバクテリア生物起源のメタン生産量を知る必要がある。また、堆積物中のガスハイドレート分解がどのように進行するのか、その応答速度はどれほどか、実フィールドで検証する必要がある。これらの課題を解決するため、ガスハイドレートが広く分布している南海トラフ域での海底掘削を計画した(国際深海掘削計画・掘削提案)。また、その準備調査として、石油公団が掘削した基礎試錐「南海トラフ」調査孔からの堆積物コアを入手し、化学分析、同位体分析を行った。その結果、南海トラフ堆積物にはこれまで報告されている中では最大レベルのハイドレートが集積していることが確認された。

研究成果

• [文献書誌] Hiroki, Y., and Matsumoto, R.: "Magnetostratigraphic correlation of Miocene regression-and-transgresion boundaries in central Honshu, Japan"Jour. Geol. Soc. Japan. 105. 87-107 (1999)
• [文献書誌] Matsumoto, R.: "Gas Hydrate Estimated from newly determined isotopic fractionation and δ^<18>O anomalies of the interstitial waters : ODP Leg 164, Blake Ridge"In Paull, Matsumoto, Wallce, et al., Sci. Results, College Station, TX(Ocean Drilling Program). 164. 123-132 (2000)
• [文献書誌] Matsumoto, R.: "Occurrence, structure and composition of natural gas hydrates recovered from the Blake Ridge, ODP Leg 164, Northwest Atlantic"In Paull, Matsumoto, Wallce, et al., Sci. Results, College Station, TX(Ocean Drilling Program). 164. 268-281 (2000)
• [文献書誌] Paull, C. and Matsumoto, R.: "Leg 164 gas hydrate drilling : An Overview"In Paull, Matsumoto, Wallce, et al., Sci. Results, College Station, TX(Ocean Drilling Program). 164. 560-572 (2000)
• [文献書誌] Lu Hailong, Matsumoto, R.: "Major element geochemistry of the sediments at ODP Site 997, Leg 164"In Paull, Matsumoto, Wallce, et al., Sci. Results, College Station, TX(Ocean Drilling Program). 164. 450-458 (2000)
• [文献書誌] Watanabe, Y., Lu Hailong: "Minor and trace element geochemistry of the Blake Ridge sediments at Site 997, Leg 164"In Paull, Matsumoto, Wallce, et al., Sci. Results, College Station, TX(Ocean Drilling Program). 164. 422-435 (2000)