研究概要 |
1.インターネット上のホームページに,主として潮位データに基づく黒潮の流路・流速・流量の情報を引き続き公開し,新たなデータを付け加えた。 2.九州南東に発生する黒潮小蛇行と黒潮流域の沿岸を西向きに伝播する約5〜10日周期の潮位擾乱の関係を,数値実験で調べた。低潮位の擾乱を日本東岸に与えると,擾乱は内部ケルビン波によって西向きに伝播し,九州南方の沿岸にたまって低気圧性の渦を作り,黒潮小蛇行を形成する。擾乱はある程度成長すると,黒潮に流されて東向きに移動しながら減衰する。高潮位の擾乱を与えても,九州南での擾乱の発達は起きない。 3.フェリーデータに含まれる潮流を見積もるため,白鳳丸KH-01-1次研究航海で回収した係留ADCPの流速データを解析した。75kHzの音波を使う最新型のADCPにより,水深576mの所でほぼ海面から海底までの流速データを得ることができた。そのデータを使い,最も卓越するM2分潮について,黒潮の位置によって変わる成層の効果を調べた。 4.順圧モードが最も卓越し,次いで傾圧第3モードが順圧モードの0.3倍程度の振幅で大きいという卓越モード間の振幅比は、成層が変わってもほとんど変わらない。そのため,順圧モードの大きさをフェリーの流速データから評価できれば,潮位データによるKuroshio Position Indexで推定した黒潮流軸の位置から任意の時点での成層構造を推測することで,潮流を見積もることができる。こうして、ADCPの測流データから潮汐成分を除去できる可能性がみえてきた。
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