研究課題
特定領域研究(B)
ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)に建設された電子・陽子衝突型加速器HERAを用いて、レプトンとクォーク間の相互作用を精密にすることがこの研究の目的である。測定に用いる実験装置は、我々を含む12カ国の国際共同実験グループZEUSにより建設し運転中であり、さらなる改良が進められている。今年度は、陽電子・電子衝突の実験を、7月より年度末までほぼ連続して行なった。これに合わせて、実験の遂行とデータの解析に必要な人員をDESYに派遣した。データ収集は順調に進み、積算ルミノシティ25pb^<-1>を得た。陽子のエネルギーを以前の820GeVから920GeVに上げることにより、より高エネルギーの衝突を観測でき、新粒子探索等の感度を上げることができた。現在収集したデータの解析を進めており、平成12年夏の国際会議に暫定的な結果を出す予定である。平成10年度までに収集した820GeV陽子と27.5GeV陽電子の衝突データをもとに、高い運動量移行領域の中性流及び荷電流深被弾性散乱反応の断面積を世界で初めて測定し、論文にまとめた。また、運動量欠損を持つ事象から、新粒子探索を行った。標準模型から期待されるW粒子の寄与程度の信号が得られた。新粒子の徴候はなかったが、W粒子生成の断面積を求めることができた。これらの結果を、5件の国際会議で報告した。さらに、3月27-28日に、英国オックスフォード大学の研究グループと共同で、高エネルギー加速器研究機構で研究会を開催し、これらの結果の報告と、今後の実験方針の議論、特に今後高輝度での精密実験を行うために必要な理論計算の方法の検討を行った。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)