研究課題/領域番号 |
11206202
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研究種目 |
特定領域研究(B)
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
浜津 良輔 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (20087092)
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研究分担者 |
犬塚 将英 東京都立大学, 理学研究科, 学振研究員
喜多村 章一 東京都立保健大学, 教授 (60106599)
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キーワード | 電子ビーム / レーザー / 電子ビームの偏極 / コンプトン散乱 / 位置感応型光子検出器 / シリコンマイクロストリップ / 放射線耐性 |
研究概要 |
HERAの電子ビームの横偏極度は、電子ビームとレーザー光とのコンプトン散乱のスピン依存性を用いて測定する。すなわち、左巻きまたは右巻きに円偏光したレーザー光とHERAの電子ビームとのコンプトン散乱から、後方に散乱した光子の上下非対称性を測定することにより、電子ビームの横方向偏極度が求められる。電子ビームの偏極度をどれだけ精密に測定することが出来るかどうかは、本研究の目的である伝弱相互作用パラメターの決定精度や、標準模型を超える物理現象の探索の範囲を広げることに密接に関係している。このことから、電子ビームの偏極度を2%の精度で求めることが必要とされる。 電子ビームの横偏極度測定装置は円偏光したレーザー光と電子ビームを交差させる衝突部と、衝突部から63mはなれた地点に設置された光子カロリメータからなる。光子カロリメータは上下2つの部分に分かれていて、それぞれの部分でコンプトン散乱により後方に出た光子のエネルギーを測定し、上部と下部のエネルギー差から光子の上下位置を決定する。上下のエネルギー差と位置の関係は非線形であることから、光子の位置決定精度には未知の不確定性が伴う。これが電子ビームの横偏極度の決定精度に限界を与える。 そこで、光子カロリメータの前面に位置感応型の光子検出器を設置して光子の位置とエネルギーの測定を分離することを検討した。位置検出器の方式を選ぶ際に注意すべきことは、検出器が設置させる場所がHERAの周回リング・トンネルの内部であるために強いシンクロトロン放射を浴びること、電子ビームとレーザー光とのコンプトン散乱による光子は63mはなれた光子カロリメータの地点でもその広がりはわずか数mm半径に集中していることから、検出器素材として高い放射線耐性が要求されることである。必要な位置決定精度の点から位置検出器の方式としてシリコンマイクロストリップによるものとし、放射線耐性が高いシリコン検出素子としてLHC/ATLAS実験のために開発されたシリコンマイクロストリップ素子を、ATLASグループの好意により入手した。 シリコンマイクロストリップと前段回路素子を結合して動作させるための回路基板を設計して製作した。そのほか、シリコンマイクロストリップによる光子の位置測定のテストを行うための各種の準備を進めている。これらの測定装置の準備を並行して、電子ビームとレーザー光とのコンプトン散乱による光子の位置およびエネルギー測定についてのシュミレーションを行ってきた。特に、シリコンマイクロストリップが長期にわたる使用で放射線による損傷を受け性能が劣化した場合でもその位置決定精度を監視するための手法について、シュミレーションにより検討を行っている。
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