研究概要 |
鉄筋コンクリート造建物を対象にした性能基盤型耐震設計法の確立を目標にして具体的な性能評価手法を中心課題として共同研究を行ってきた.米国では本プログラムの枠外であるが,同じく性能基盤設計法(PBD)をその組織の研究目標としているPEERC, UC Berkeley (Prof. Jack Moehle)を主たるCounterpartとして緊密な研究協力を行ってきた.その一環として1999年より毎年,合計3回の日米ワークショップを開催した.毎回日米から約30名の先導的研究者が最新の研究成果を発表して,活発な意見交換を行うとともに,印刷公表された会議の論文は先導的研究成果として広く参照されている.地震応答解析,部材の性能などの新しい評価手法やモデル化手法などが提案され,さらに,(1)実験データの交換,(2)同じ実験の異なるモデルによる解析,(3)共通テーマに関する詳細な検討,(4)同じ建物の地震応答解析,に関して,個別の共同作業が行われている.一方,本研究費による実験研究により個別に以下の成果が得られている.(1)接合部破壊が先行する外柱・梁接合部を対象として柱・梁主筋の付着性能を変数とした実験を行い,柱・梁接合部の破壊を統一的に理解する方法を構築した.(2)横補強筋を持つ引き抜き試験体を用いた実験と有限要素法解析を日米で分担して実施し,付着すべり特性における寸法効果を破壊力学にもとづいて定量的に把握した.(3)鉄筋コンクリート造の異形断面柱部材の静加力実験により,剛性および強度と変形能の評価法を確立し,層崩壊や偏心による損傷集中を防止するための設計法を提示した.以上のように,性能基盤型設計法という共通のテーマによるワークショップを定期的に開催することにより,先端の研究成果の公表と緊密な共同作業を実現することが可能になり,日米の耐震設計法に関して共通の理解は格段に進んだ.
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