構造物のモニタリングと損傷度検出システム

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11209206
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 鈴木 祥之 京都大学, 防災研究所, 教授 (50027281)
• 研究分担者: 武田 展雄 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (10171646) ; 佐藤 忠信 京都大学, 防災研究所, 教授 (00027294)
• キーワード: 構造物の健全度 / モニタリングシステム / 非線形システム同定 / 最大歪記憶型センサー / 地震時損傷評価 / 構造制御システム / 非線形制御

研究概要

地震時に被害を受けた構造物や経年的劣化を伴う構造物の健全度をモニターする計測・解析システムの開発と構造物の信頼性の向上させるための次世代システムを開発することを目的とする本研究で得られた成果は、以下のようにまとめられる。
1)構造システムの動特性の同定:動特性の非定常性を実時間で同定することを目的として、新しく適応型モンテカルロフィルタを開発した。次に、非線形構造システムに対しで、線形化した状態空間モデルを用いた同定手法とし、逐次線形化法を用いた手法、復元力モデルの非線形パラメータを同定する手法を提示した。さらに、非線形状態空間モデルを用いた同定手法を開発するとともに、数値シミュレーションや実大構造物の微動計測によって有効性を検証した。
2)構造物の健全度モニタリングシステムの開発:炭素繊維の導電性を利用したCFRP複合材料を用いて健全性評価について研究を行った。ここでは、電気的無効長さという新しい概念を導入し、CFRP材内部導電パスのモデリング方法を提案し、解析モデルによるCFRP材の電気-力学挙動の特性の検討を行い、その妥当性を実験により確認するとともに、最大歪記憶型パッチセンサの基礎付けを行った。
3)構造物の地震時損傷評価法の開発:構造物系に含まれる不確定性を考慮した地震時損傷解析法として、確率微分方程式を用いた定式化による方法を開発し、復元力特性を有する非線形構造物系に適用した。
なお、2000年10月に米国においてThird US-Japan Workshop on Non-linear System Identification and Health Monitoringを、また11月には国立京都国際会館において第2回日本制震(振)シンポジウムを、開催し、研究成果を発表するとともに米国側との共同研究を進めた。

研究成果

• [文献書誌] H.Li,B.Wu,L.Katafyoist,Y.Suzuki and X.Yuan: "Control Algorithm Based on Maximum Energy Dissipation for Semi-Active Fluid Dampers"Proc.of Second Japan National Symposium on Structural Control. 71-76 (2000)
• [文献書誌] 裴起煥,鈴木祥之: "可変ゲイン制御則の実験的検証"第2回日本制震(振)シンポジウム論文集. 431-436 (2000)
• [文献書誌] W.Q.Zhu,Z.G.Ying and Y.Suzuki: "Nonlinear Stochastic Optimal Control of Building Structures under Earthquake Excitation"Proc.of Second Japan National Symposium of Structural Contrl. 207-214 (2000)
• [文献書誌] W.Q.Zhu,Z.L.Huang,Y.Suzuki: "Equivalent non-linear system method for stochastically excited and dissipated partially integrable Hamiltonian systems"International Journal of Non-linear Mechanics. 36. 773-786 (2001)
• [文献書誌] 武田展雄: "知的複合材料システムのための構造ヘルスモニタリング技術"日本航空宇宙学会誌. 48・556. 307-312 (2000)
• [文献書誌] Y.Okabe,S.Yashiro,T.Kosaka,N.Takeda: "Detection of Transverse Cracks in CFRP Composites Using Embedded Fiber Bragg Grating Sensors"Smart Materials and Structures. 9・6. 832-838 (2000)
• [文献書誌] N.Takeda: "Structural Health Monitoring for Smart Composite Structure Systems in Japan"Annals de Chemie-Science des Materiaux. 25・7. 545-549 (2000)
• [文献書誌] 佐藤忠信,室野剛隆,西村昭彦: "観測波に基づく地震動の位相スペクトルのモデル化"土木学会論文集. 640・I-50. 119-130 (2001)
• [文献書誌] Jun YANG・Tadanobu SATO: "Interpretation of Seismic Vertical Amplification Observed at an Array Site"Bulletin of the Seismological Society of America. 90・2. 275-285 (2000)
• [文献書誌] 佐藤忠信,梶啓介: "非線形構造システムの線形同定法"土木学会論文集. 647・I-51. 155-165 (2000)
• [文献書誌] Victor A.Gotlib・Tadanobu Sato・Abraham I.Beltzer: "Neural Computations of Effective Response of Random Composites"International Journal of Solids and Structures. 37. 4527-4538 (2000)
• [文献書誌] 佐藤忠信,田中悟: "可変減衰装置を用いた構造物の実時間ハイブリッド震動制御実験"土木学会論文集. 647・I-51. 425-433 (2000)
• [文献書誌] Victor A.Gotlib・Tadanobu Sato・Abraham I.Beltzer: "Neural Computing of Effective Properties of Random Composite Materials"Computers and Structures. 79. 1-6 (2001)
• [文献書誌] 鈴木祥之(編著): "第2回日本制震(振)シンポジウム論文集"日本学術振興会制震(振)構造技術第157委員会. 630 (2000)