研究概要 |
震災後の居住地の変化とくらしの実態に関する調査(被災地パネル調査第1回)を実施し,震度7もしくは,ガスの供給が2ヶ月以上停止した地域250地点から2,500名を無作為に抽出した「被災地内居住者」と,県外被災者向けに出されている「ひょうご便り」の読者リストより無作為に選んだ800名の,合計3,300名を対象とした質問紙調査を1999年3月に実施し,その分析を研究協力者らと行った.その結果,被災者のすまいの再建の内容は被災後100時間以内に決められていることや,高齢者は被災地外に出ていかないのに対し,若年層は容易に被災地外に脱出し,戻ってこないことが多いことなどが見出され,被災者レベルでの復興の難しさを明らかにした.また,「生活再建とは何か」を明らかにするために,住民参加型のワークショップを都合12回行い,KJ法を用いて意見を整理した.その分類・整理作業から,市民の生活再建の実感が以下の7要素から成り立つことが分かった.それらは,すまい・つながり・まち・こころとからだ・そなえ・くらしむき・行政とのかかわり,の7つである.一方,総合的な損失の評価は,平均寿命と1人当たりのGDPの関係による推定法を提案し,これを1999年の台湾とトルコの地震災害に適用したところ,初年度,前者で37億ドル,後者で31億ドルの間接被害が算定され,世界銀行の結果とほぼ合うことが見いだせ,その適用性が大きいことが見出された.
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