研究概要 |
平均寿命と地域内総生産(GRP)との間の強い相関関係に着目し,自然災害,交通事故,疾病などに起因する大規模な人命の損失がもたらす社会的価値の損失を,それらの要因による平均寿命の低下量から評価する手法を構築した.その手法を用いて1995年阪神・淡路大震災がもたらした社会的価値の損失を推定した.その結果,阪神・淡路大震災がもたらした初年度における社会的価値の損失は,兵庫県で約1.62兆円,全国で1.75兆円と推定された.阪神・淡路大震災による被災地の復興に関して,親和図・連関図・系統図といったTQM手法を採用し、被災者との協働作業を通じて草の根から震災復興の生活再建課題の明確化をおこなった。その結果、生活再建課題は「すまい」「つながり」「まち」「こころとからだ」「そなえ」「景気・生業・くらしむき」「行政との関わり」の7つの側面から成りたっていることを親和図の解析をもとに明示化した。さらに、連関図の作成を通じて、それぞれの生活再建課題を実現するための目的・手段関係を構築した。そして最終的に、系統図を作成して、再建の成果を評価するためのスキームづくりを行った。また,世帯の家計に及ぼす震災の影響(被害による家計負担と事後対策による救済効果)を概略的に分析した。震災の影響を,被害の発生状況や事後対策の効果との関連で具体的に考察できる収支項目が見いだされたものの,家計の状況を平均的に捉えるという調査の性格から,世帯間に大きな幅がある震災の影響を十分に記載できないという制約が明らかになった。この点を克服するための方法の一つとして,世帯を単位とした家計シミュレーションに注目し,シミュレーションモデルの構築を課題化した。
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