研究概要 |
研究実績の概要 阪神・淡路大震災に関する第2回パネル調査結果の解析については、平成13年度に実施したパネル調査結果の解析から,震災後約7年経過後の被災者には、市民意識の形成が極めて明瞭に認められた。すなわち、震災前には官と民が行うことには明瞭な区分があると考えられていたものが、その境界に両者の協働の部分が存在することが認められた。これは震災の経験による市民意識の高揚と考えられ、被災地の自治体が実施する事業への住民参画が実現する社会へと変貌したことを示している。一方、ノースリッジ地震に関する第2回パネル調査を米国のデラウエア大学災害研究センターと協力して,カリフォルニア州アラメダ郡の住民に対して,同様のパネル調査を実施した。その結果について日米比較を行ったところ、阪神・淡路大震災を経験した住民と同様に、米国の被災者に市民意識の高揚が認めることができた。さらに、震災直後の対応に対する意思決定者インタビュー調査の実施と成果のとりまとめを行った。そこでは神戸市中央区に位置している企業や行政のトップ、あるいは当時の日本政府の震災対応にかかわった村山元首相、小里防災担当大臣らから,震災当日の行動をインタビューし,どのような理由からそのような行動を取ったのかを明らかにした.その直接のヒアリングの結果はプライバシーの保護の問題があって今後最長30年間は公表できないことになっているが、間接的にまとめたものについては適宜公表することにし、今後の大震災時の意思決定のあり方を示すことができた。また、平成15年1月18,19日の両日、神戸において第3回比較防災学ワークショップを開催し、日米の関係者が集まって研究交流し,共同研究の課題への取り組みを確認した.とくに2001年9月11日に起ったニューヨーク・ワールドトレードセンター同時多発テロ事件を都市災害と見なして、それへの対応における教訓に関して日米の研究者が討議し、阪神・淡路大震災と類似の教訓と異種の教訓が見出され、今後の大都市災害への取り組みに有用な知識の集積が実現できた。
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