研究課題/領域番号 |
11215204
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研究種目 |
特定領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 大阪大学 (2001) 名古屋大学 (1999-2000) |
研究代表者 |
谷村 克己 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00135328)
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研究分担者 |
伊東 千尋 和歌山大学, システム工学部, 助教授 (60211744)
AKIMOTO Ikuko Faculty of System Engineering, Wakayama Univ., Research Associate (00314055)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2001
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キーワード | 光誘起相転移 / 有機電荷移動錯体 / フェムト秒分光 / 自己増殖 / 非線形緩和 / 初期条件敏感性 |
研究概要 |
本研究の目的は、擬1次元電荷移動有機錯体結晶tetrathiafulvalene-p-chloranil(以下TTF-CAと略す)において発生する光誘起によるイオン性相から中性相への相転移(NI転移)の動力学を明らかにし、相転移機構を解明する事である。その為、1)相転移発現特性における初期状態敏感性の特徴とその機構を明らかにする事、2)相転移発生の動力学における素過程をフェムト秒時間域の時間分解分光によって分離し、各素過程において発現する協力現象と非線形性を解明する事、を中心的課題として設定し、研究を進めた。以下に、本研究で得られた主要な結果の概略を示す。 1)光誘起相転移過程は、基本的に3つの連続する基礎過程から成る。第1は、励起直後1ps程度で発生する前駆体生成過程であり、第2の過程として、励起後50ps程度までに、局所的増殖過程が起こる。最後に第3の過程として、中性相秩序形成過程が始まり、励起後数百ps程度で相転移過程が終了する。 2)第1の前駆体形成過程は、吸収された1光子あたり数百個の分子対の電荷状態が変化する非線形過程であり、励起波長によってその増殖率が変化し、初期条件敏感性が発生する。この過程は、基本的に温度に依存せず、光励起によって誘起される強相関多体系の非線形動力学としての特徴を示す。 3)第2、第3の過程は、光励起によって発生した前駆体の生成量に敏感に依存する非線形緩和過程であり、前駆体生成量がある臨界値を越すと、光誘起変化量が自己増殖的に増加して中性相秩序が形成される。この自己増殖を伴う中性相秩序の生成過程は、両相の自由エネルギー差が重要な役割を果たす熱力学的性質にも左右される非線形緩和過程である。 以上の本研究成果は、光誘起NI転移機構の微視的理解に本質的寄与をなすものである。
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