研究課題/領域番号 |
11215206
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
相原 正樹 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (70091163)
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研究分担者 |
稲垣 剛 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助手 (10253139)
高橋 聡 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (80212009)
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キーワード | 励起子 / ボーズ凝縮 / BCS状態 / 巨視的量子状態 / Eliashberg方程式 / 非線形光学 |
研究概要 |
本研究では、電子相関を十分に取り入れた発光スペクトル形状を計算することに初めて成功し、励起子のボーズ凝縮相と電子正孔BCS相との間のクロスオーバーの様相を定量的に明らかにした。高密度状態では、フェルミ縮退を反映して広い発光スペクトルとなるが、フェルミ面上にBCSギャップが開くこと及び量子揺らぎの効果によるピーク構造が生ずる事を理論的に示した。また、バンドの繰り込み効果により、発光の低エネルギー端は低エネルギー側に大きくシフトし、バンドの形状も放物型からずれる事が示された。他方、密度が低い場合は、励起子描像で記述でき、励起子間相互作用を反映したP、P_2線と呼ばれるスペクトルが現れる事がしめされ、その強度の粒子密度依存性が明らかにされた。この様に、高密度から低密度になるに従い、BCS的巨視的量子状態から、ボーズ凝縮的な巨視的量子状態へのクロスオーバーの様相が全密度領域で統一的に解析された。これは、高温超伝導の疑ギャップの問題とも関連して重要な結果である。また、電子正孔BCS状態は、エネルギーバンドの異方性や熱的揺らぎなどにより容易に壊される可能性があるので、観測困難と見られているが、強い光励起下ではBCS状態が安定化されることがポンプ・プローブの解析によって示された。電子正孔BCS状態に対する電子相関の効果を更に精密に調べるために、可視光ポンプ・赤外プローブのスペクトルをEliashberg方程式により解析し、BCS状態の安定性を定量的に示した。この結果は、光励起下での電子正孔ペアの巨視的量子状態が観測される可能性を強く示唆するもので、半導体中の高密度励起状態の研究に新たな道を開く重要な成果である。
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