ポリ(3-ヒドロキシブチレート)[P(3HB)]や(3HB)と(3-ヒドロキシバリレート)及び(4-ヒドロキシブチレート)との様々な組成の共重合体[P(3HB-3HV)]及び[P(3HB-4HB)]を様々な炭素源を用いて生合成した。これらの微生物産生ポリエステルの結晶化挙動を調べた。P(3HB-3HV)は二成分が共結晶化する系であるが結晶内に取り込める他成分の量は結晶化条件に大きく依存した。一方、P(3HB-4HB)は二成分が別々に結晶化する系であるが、共重合化によって結晶表面に不規則性が導入されるために融点が著しく低下することが分かった。P(3HB-4HB)の結晶密度や非晶密度をX線回折や密度測定で求め、密度法による結晶化度を決定することができた。さらにDSC測定と併せてP(3HB)及びP(4HB)の結晶の融解熱を求めることができた。 P(3HB)にスチレン(St)をグラフトした場合の熱処理による結晶厚化はわずかなグラフト率でも熱処理による結晶厚化が非常に困難になることが分かった。この影響は融点近くの高温熱処理ほど大きくなった。すなわち、高融点で高ラメラ厚の結晶形成の場合ほど高規則性やスムーズな結晶化環境が要求されることが分かった。 StグラフトしたP(3HB)の等温結晶化挙動を加熱試料台を搭載した偏光顕微鏡で観察し球晶成長速度Gを求めた。P(3HB)は球晶成長速度の極大温度は約90℃であるが、グラフト率が増加するにつれてこの極大温度が低温側にシフトした。球晶成長速度はグラフト率の増加とともに急激に低下しP(3HB)の結晶化をStグラフトが著しく妨害していることが分かった。しかしP(3HB)の融点はStグラフトによってもほとんど低下しないことから、グラフトはP(3HB)結晶には入ることができず結晶表面に分布していると推定された。
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