これまでに、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)[P(3HB)]及びこれと3-ヒドロキシバリレート(3HV)や4-ヒドロキシブチレート(4HB)との共重合体P(3HB-co-4HB)及びP(3HB-co-3HV)を生合成し、それらの結晶化挙動を調べた。0〜50%3HVの範囲で3HV成分がP(3HB)結晶に大部分が取り込まれて共結晶化すること、しかし50%3HV以上の組成範囲では3HB成分がP(3HV)結晶にほとんど入れないこと、一方、P(3HB-co-4HB)共重合体は両成分とも共結晶化しにくいことが分かった。 本年はP(3HB-co-4HB)の密度法から結晶化度や結晶の融解熱を求めることができた。また、P(3HB-co-4HB)の等温結晶化を行い、球晶成長速度Gを求めると、速度最大の温度はP(3HB)と共重合体とほとんど変わらなかった。5mol%4HB試料の球晶成長速度Gは1/3〜1/4に低下するが、さらに4HB成分が増加してもGはほとんど低下しなかった。4HB成分が増加するにつれて球晶の輪郭がぼやけたり、バンド間隔が狭くなり、より不規則性が増したことを表わしている。 次にP(3HB)に酢酸ビニル(VAc)を放射線グラフトした。最大収率を与える重合温度は30℃であった。VAcグラフト試料の融点や結晶化度はグラフトによってほとんど変化しなかった。VAcグラフトP(3HB)をアルカリで鹸化して親水性のPVAグラフトP(3HB)を得た。これらのP(3HB)の酵素分解試験を行った結果、VAcグラフトP(3HB)は48hまでに5〜6%しか重量減少せず、P(VAc)がP(3HB)を包み込んでしまい、グラフト率に依存しなくなることが分かった。一方、PVAグラフトP(3HB)の酵素分解による重量減少はP(3HB)より速まるようになった。P(3HB)が親水化し、酵素溶液とのぬれ特性が改善されたためである。P(3HB)やその共重合体の生分解性速度は疎水性及び親水性モノマーを適宜使い分けグラフト重合することによって制御できることが分かった。
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