微生物が生産する生分解性ポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシブタン酸)(P(3HB))は、土壌中では、主に真菌(カビ)類により分解されることが知られている。本研究では、カビ由来P(3HB)分解酵素の構造と機能を解明することを目的としている。昨年度までに、本酵素のcDNAを解析し、本酵素がバクテリアSBD様配列を有していないことを明らかにした。本年度は、高次構造の解明を目指して、酵母内での組み換え蛋白質の大量合成を検討した。 分解酵素をコードするcDNAを、酵母発現ベクターpPICZαBに組み込んだ。この組み換えベクターをpPFDPと命名し、酵母Pichia pastoris KM7 1Hに形質転換した。組換え株の培養上清から、組換え型酵素を疎水性カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。酵素精製表を、Table3に示す。最終的に活性は、回収率61.8%で、精製度6.8倍となり、培養上清200mlから1mgの精製酵素を得た。一方、野生株では、培養上清5Lから約3mgの精製酵素が得られる。このことから、組換え株は、野生株より分解酵素を多く分泌することがわかった。また、組換え型酵素の比活性は1U/mgであり、野生型酵素の比活性8〜10U/mgと比較して低かった。 抗野生株P(3HB)分解酵素抗血清を用いて、組換え酵素、組換え株上清および組換え株菌体に対して、ウエスタンブロッティングを行ったところ、組換え酵素およびその上清に対して強いシグナルが検出された。このことから、野生型酵素と組換え株由来のP(3HB)分解酵素が、免疫学的に同一であることが確認され、さらに、本組換え酵素は、培養上清中に分泌生産されていることがわかった。
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