本研究は、微生物産生ポリエステルを主成分とし、力学的強度が優れ、また制御可能な生分解性を持つ環境低負荷高分子複合材料を創製することを目的とした。以下の4項目の研究を行った。 1.微生物産ポリヒドロキシアルカン酸共重合体の固体構造と性質 Ralstonia eutrophaなどの微生物により一連のポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)共重合体、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-4-ヒドロキシ酪酸)共重合体、及びポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸)共重合体などを合成し、結晶構造、融点、ガラス転移点、生分解性の単量体単位組成依存性を明らかにした。 2.ポリエステル/多糖複合材料の相溶性と物性 数種の生分解性ポリエステルと天然多糖キチンまたはキチンの脱アセチル化誘導体キトサンとからなる複合材料を調製し、混合状態と物性を調べた。キチンまたはキトサンはポリエステルと分子間水素結合を形成して相溶化することを明らかにした。 3.ブレンドにより動的性質と相構造を制御することによる生分解性の促進 完全非晶質の化学合成アタクトーポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(PHB)は単独では微生物由来PHB分解酵素による加水分解を受けないが、アタクト-ポリ乳酸とブレンドすると生分解されるようになることを見いだし、分解機構を明らかにした。 4.水素結合の形成によるポリエステルの固体構造と物性の物理的制御 数種の微生物産ポリヒドロキシアルカン酸とフェノール性水酸基を持つ数種の低分子量化合物及びポリ(4-ビニルフェノール)とのブレンドを調製した。強い分子間水素結合の形成によりポリエステルの物性が大きく変化することを明らかにした。
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