研究概要 |
原核微生物が菌体内に蓄積するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、生分解性を有する熱可塑性プラスチックとして注目されているが、その生産コストの高さが普及を妨げている。メタノール資化性細菌Paracoccus denitrificansは、ユニークなPHA産生特性を有していること故に、本菌のPHA合成に関する遺伝子の発現調節機構を研究することとした。まず、既にクローニングされているRalstonia eutrophaのphaABC遺伝子をプローグとして、P.denitrificansのPHA合成系遺伝子phaA,phaB,phaCをクローニングし一次構造を明らかにした。その結果、本菌株のPHA合成系遺伝子はphaCとphaABがゲノム上で離れて存在するタイプであること、PHA synthaseが他の菌株のそれらよりも比較的大きなものであること、3種類のPHA synthaseのうちタイプIに属すること、などを明らかにした。 また、本菌でのPHAの生産性を向上させることを目的とし、広宿主域ベクターを介して3種類のクローン化した遺伝子それぞれを増強した組換え体での遺伝子投与効果を検討した。その結果、phaC増強株のみにおいてPHAの菌体内含量および生産性が増大し、PHAの含量・生産性向上にphaCの増強が有効であり、生合成の律速段階はphaCにあることを示した。また、蓄積されるPHAの分子量は菌体内のphaCの量によって影響されることを明らかにした。 次に、これらの研究中に、PHAの蓄積に伴って約16KDa、の蛋白質が生産される現象を見出した。この蛋白質がPHAの顆粒表面に存在することを明らかにし、アミノ末端配列を決定したところ、その構造遺伝子(phaP)はphaCのすぐ下流に位置していることが判明した。ゲノムウォーキングを行い、さらにphaPの下流にphaRを見出した。これらphaP,phaRの遺伝子産物とも機能既知の蛋白質とは相同性を示すものは存在しなかったが、phaR蛋白質はPHA合成に何らかの関係があると推定した。
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