研究概要 |
脱窒菌かつメチロトローフであるParacoccus denitrificansの菌体内のPHA合成と分解の調節機構を解明する目的で遺伝子レベルおよび酵素レベルで研究を行い、以下のような新しい知見を得た。 1.PHA合成の調節遺伝子phaRの発見とその機能:PHA顆粒結合タンパク質フェイシンをコードする遺伝子phaPをPHA合成酵素の遺伝子phaCの下流に見出したが、さらにその下流にORFを見出し、これをphaRと名付けた。phaRの翻訳産物PhaRはPhaPの発現を抑制するDNA結合性転写因子であり、かつPHA顆粒にも結合し、全体としてPHA顆粒の大きさを調節する調節因子であることを世界で初めて証明した。 2.PHA合成のグローバルな調節機構:PHA合成遺伝子phaA, phaB, phaCの発現量を転写レベル(ノーザンドットブロッティング法で測定)および翻訳レベル(ウェスタンブロッティング法で測定)で調べた結果、これらの遺伝子はPHA合成の高低にかかわらず構成的に発現していた。PHA、合成の入口酵素β-ケトチオラーゼはCoASHによって強く阻害されること、および菌体内のCoASHの測定値から、PHA合成はCoASHレベルによってグローバルに調節されると結論した。 3.PHA分解の酵素群の分離・精製と特性:菌体内に存在する3HB oligomer hydrolaseおよびPHB depolymeraseの両者について、精製と諸性質を調べた。後者については、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーの溶出プロフィールから2種類(PHBをオリゴマーに分解する酵素とモノマーにまで分解する酵素)存在することを発見した。両者についてはMg^<2+>の要求性に大きな差があった。このことから、菌体内のPHA分解には少なくとも2つの経路が存在することを世界で初めて明らかにした。
|