研究概要 |
(1)1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-グルシトール(DAG)をジオール成分とするポリエステルアミドの合成 グリシン、グリシルグリシン、L-アラニンをα-アミノ酸成分として用い、p-トルエンスルホン酸の存在下でDAGと反応させて対応するDAGのビス(α-アミノ酸)ジエステルを調製した。これを種々の鎖長の脂肪族ジカルボン酸のジ(p-ニトロフェニル)エステルとN-メチルピロリドン中40℃で重縮合させて、数平均分子量1.1万から3.8万までのポリ(エスエルアミド)を合成した。これらのポリエステルはジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド、2,2,2-トリフルオロエタノールなどの極性溶媒に溶ける。アミノ酸を組み込むことによってガラス転移点および融点はポリエスエルに比べて上昇した。熱分解開始温度はいずれも310〜340℃の範囲にあった。 (2)ポリ(エステルアミド)の生分解性 上述のポリ(エステルアミド)の生分解性を、土中埋没試験、活性汚泥中での分解試験、酵素分解試験により評価した。対応するポリエステルに比べれば土中での分解は遅いが、セバシン酸単位を含むポリ(エステルアミド)ではL-アラニン成分を含むものが最も分解しやすかった。土中埋没後のフィルム表面には糸状菌のほかに放線菌や細菌の存在が認められた。セバシン酸単位を含むポリ(エステルアミド)の活性汚泥中での分解は、グリシン>グリシルグリシン>アラニンの順になった。酵素分解試験では、パパインを用いたときに、グリシルグリシンあるいはL-アラニン成分を含むポリエステルアミドがよく分解した。豚膵臓リパーゼを用いたときには、ジカルボン酸成分のメチレン鎖長が4および5のポリ(エステルアミド)は対応するポリエステルよりもよく分解した。 以上の結果から、糖質を活用した新規生分解性ポリ(エステルアミド)の合成の見通しが立った。
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