研究概要 |
ポリ(L-ラクチド)[poly(L-LA)]は高融点かつ生体適合性・機械的特性に優れているという長所を有する反面,固くて脆く,(生)分解速度が非常に緩慢であるという短所も併せ持つ.Poly(L-LA)はコスト競争力の面でも,汎用プラスチックの価格に対抗できる唯一の生分解性高分子になると予想される.しかし,このホモポリマーそのものでは上記の短所などの点から,その普及がかなり限定されたものとなる.そこで本研究では,poly(L-LA)の長所はできる限り維持しながら,その短所を改善して広汎な用途を有する新規生分解性高分子を調製することを目的とした.また,我々の有する触媒製造技術およびポリマー合成技術を駆使して,従来は(共)重合化が困難であったモノマーの高分子化にも挑戦する.本年度は以下の成果が得られた. 1.L-ラクチド(L-LA)共重合体 従来の研究をもとに,poly(L-LA)の短所を改善すべくデプシペプチド(L-DMO)/ε-カプロラクトン(CL)/L-LAの三元共重合体を合成した.その結果,L-DMO/CL/L-LAの組成(モル)比が5〜10/15〜20/70〜80のときに,poly(L-LA)の長所(熱的・機械的特性)をあまり低下させることなく,柔軟で生分解性にも優れた新規生分解性高分子を得ることができた.今後は,デプシペプチドの光学異性がポリマーの物性や生分解性に及ぼす影響などを検討する予定である. 2.エチレンカーボネート(EC)共重合体 脱炭酸を伴わずECの(共)重合体を合成することはこれまで困難であるとされてきた.本研究ではECとラクトン(特にCL)との共重合化を,有機金属錯体[(C_5Me_5)_2SmMe(THF)]を触媒に用いて試みた.その結果,高分子量(約14万以上)かつEC含有量の高い(約30mol%まで),EC/CL共重合体を高収率で得ることに成功した.また,共重合体は生分解性にも優れていた.
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