研究概要 |
生分解性高分子として価格の点からも最も期待されているのが,ポリ(L-乳酸)すなわちポリ(L-ラクチド)[poly(L-LA)]である。Poly(L-LA)は高融点かつ良好な機械的特性・生体適合性を有する反面,固くてもろく分解速度が緩慢であるという短所を持つ。 そこで本研究では,L-ラクチド(L-LA)と他の新規モノマーとの共重合体を合成し,poly(L-LA)の持つ長所はできる限り維持しながらもその短所が改善された,新規生分解性高分子を開発することを目的とした。また,我々の有する触媒製造および重合技術を用いて,従来は合成が困難であった生分解性高分子の調製についても検討した。本年度は以下の成果が得られた。 1.新規L-LA共重合体 まず,新規モノマーである4-アルキルカプロラクトン(4ACL)を,4-アルキルシクロヘキサノンのBaeyer-Villiger反応により合成した。4-メチル,4-エチル,そして4-t-ブチルシクロヘキサノンから得られた4ACLをそれぞれ4MCL,4ECL,および4BCLと略称した。次に,これら4ACLとL-LAの共重合体を,触媒にオクチル酸スズを用いて合成した。得られた共重合体(4ACL組成15〜20mol%)はpoly(L-LA)に比べ破壊伸度が約20〜70倍にも達し,固くてもろいpoly(L-LA)の柔軟性が大幅に改善されていた。また,酵素分解性は4MCL≫4ECL>4BCL共重合体の順となり,生分解性が異なる種々の共重合体が得られることも判明した。 2.その他の共重合体 昨年度一部報告したエチレンカーボネート(EC)とラクトン類との共重合体についても,有機ランタナイド錯体触媒[(C_5Me_5)_2SmMe(THF)]を用いて,脱炭酸を伴なわずに合成することに成功した。さらに,従来,重縮合によっては高分子量体が得られにくかった脂肪族ポリエステルの調製にも成功した。また,これら共重合体の生分解性についても評価した。
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