研究概要 |
本年度は平成11〜12年度の研究成果をもとに、物性と生分解性とが高度にバランスのとれた新規ラクチド共重合体を合成し、それらの諸物性測定や生分解性の評価を行なった。 まず,環状カーボネートである,1-メチルトリメチレンカーボネート(1MTMC)の光学異性体を合成し,これらとL-ラクチド(L-LA)との共重合体を調製した.そして,これらの熱的特性を調べた結果,L-LA含量が約80mol%以上では融点(T_m>140℃)を有する結晶性ポリマーであることがわかった.これら共重合体の酵素による分解性において,エステラーゼやリパーゼ酵素を用いた場合,1MTMCの異性体のうちR-体やラセミ体のホモポリマーは分解されるが,S-体のホモポリマー及び共重合体はほとんど分解されないことが明らかとなった.一方,プロティナーゼK酵素を用いた場合,1MTMC異性体の種類によらずL-LAが約60mol%以上含まれると,L-LAホモポリマーよりも分解性がかなり向上することが判明した. 次に,デプシペプチドである,3,6-ジメチル-2,5-モルホリンジオン(DMO)の光学異性体をアミノ酸(L-アラニン)とオキシ酸誘導体(L-,DL-,またはD-乳酸エチル)から調製し,これらとL-LAとの共重合体を合成した.そして,これら共重合体のプロティナーゼK酵素による分解性を調べた結果,DMO異性体の種類によらず,DMO含量が10mol%以下でもL-LAホモポリマーに比べ速やかに分解されることが判明した.また,カプロラクトン(CL)を含めたDMO/CL/L-LA三元共重合体では,L-LAホモポリマーの固くて脆い物性が大きく改善された柔軟な共重合体を得ることが可能であった.
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