研究概要 |
本年度は最終年度であり,これまでの成果をもとに実用化可能な共重合体について,より詳細な合成・物性・生分解性の検討を行なった.また,種々の官能基を有する共重合体についても同様な検討を行なった. 以前の研究においてポリ乳酸,すなわちポリラクチド[Poly(LA)]の主鎖に環状デプシペプチドである3,6-ジメチル-2,5-モルホリンジオン(DMO)を共重合して導入することにより,共重合体の酵素分解性が大きく向上することを報告した.DMOはアミノ酸(ここではアラニン)とオキシ酸誘導体(ここでは2-プロピオニルブロミド)から調製した.このうちアミノ酸の光学異性を変化させると分解性は大きく変動するが,オキシ酸誘導体の光学異性を変えても分解性にはほとんど影響を与えないことがわかった.この二元(DMO/LA)共重合体にカプロラクトン(CL)を導入した,DMO/CL/LA三元共重合体が分解性と物性のバランスが最も良く取れていることが最終的に判明した. 生分解性高分子をいろいろな用途に用いるには,また機能性を持たせるためにはPoly(LA)のような脂肪族ポリエステルだけでは困難である.そこで我々は,種々の官能基を有するラクトン類を新たに合成し,これらとLAとの共重合体を調製することを試みた.その結果,水酸基を有するラクトンとLAとの共重合体では酵素分解性が大きく向上することがわかった.また,反応性二重結合を有するラクトンとLAとの共重合体を合成後,これを種々の条件下で官能基変換することにより二重結合/エポキシ/ジオールの三つの官能基組成を任意にコントロールすることが可能であった.さらに,この共重合体から化学修飾により架橋体を合成することにも成功した.
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