脂肪族ポリエステルを中心に各種プラスチックの分解性好熱菌の単離に成功し、多くの新規な知見を得た。以下、主なものにつき高分子材料別に述べる。 脂肪酸ポリエステル:ポリ(L-乳酸)(PLLA)の分解性好熱菌をまず1株発見した。本菌は好熱菌としては勿論、放線菌以外では世界で最初の分解菌であった。本菌はエンド型とエキソ型の分解を行うようで、後者につき酵素レベルの知見も得た。その後さらに1株を発見し計2株を得た。いずれもバシラス科に属するようであるがかなり系統を異にしており、PLLA分解菌が特定の属に片寄っていないことが示唆された。また、ポリブチレンスクシナートアジパートの分解性好熱菌を発見した。本菌は好熱菌として世界で最初の分解菌であるが、微生物全体としても世界で2番目の分解菌であった。 ポリ乳酸系新規材料:本領域内の「化学合成ポリエステル班」で試作されたPLLA共重合体やポリ(D-乳酸)(PDLA)の生分解について共同研究を行ない種々の有用な知見を得た。特に、従来生分解が否定されていたPDLAが我々の発見した微生物により顕著に分解されるという画期的な事実を見いだした。 その他:生分解性プラスチックの分子設計の参考として取り上げたエチレンビニルアルコール共重合体およびナイロンそれぞれに対する分解菌を世界で初めて発見した。後者はナイロン12およびナイロン6を分解するものとナイロン12およびナイロン66を分解するものの計2株であるが、いずれもナイロン12に対する分解性が高いという示唆に富んだ結果を得た。
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