研究概要 |
石炭燃焼時の有害ヘテロ元素の排出を抑制するためには、ヘテロ元素の存在形態、加熱時の化学変換挙動などの深い理解に基づく排出抑制策を考える必要がある。本研究では硫黄酸化物、ならびに有害微量元素の排出挙動を対象に基礎研究を行い、排出抑制のための方法を提案することを目的とした。共通する手法は、ヘテロ元素の排出を安価な石灰や石炭灰の利用により抑制しようというものである。石炭へ石灰のスラリーを添加する簡便な方法でイオウ酸化物の発生を効率よく抑制する方法、生石灰を利用した化学的脱灰法により石炭に含まれる鉱物および有害微量元素の一括除去法、石炭燃焼時の微量金属の挙動を解明することによる微量金属の排出抑制のための手法等の開発を具体的な目的とし、本年度はとくに石炭燃焼時の微量金属の挙動を解明を重点的に行った。 微量金属の存在形態、とくに有機物と結合した微量金属の形態を明らかにするために、石炭種、加熱条件、浸出液を組み合わせた包括的研究を行った結果、As, Cr, Seが黄鉄鉱および有機物と共存する元素であるといったこれまでにない知見を数多く得ることができた。また、石炭だけでなくチャーや石炭灰をHCl, HNO_3で浸出することで存在形態を解明するための新手法を開発した。Pb, Zn, Asなどの微量金属は1100℃まで加熱すると揮発するが、その揮発挙動は昇温速度に依存するという興味深い知見を見出した。これは、高温部で炭素が残存しているか否かで大きな違いがあるためであると結論づけた。
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