研究概要 |
本研究の目的とする次世代酸化カルシウム系脱硫・脱硝剤の開発は、既に我々が世界で最初に見出した酢酸膨潤法と水蒸気膨潤法、さらに従来の湿式消化反応を利用した水膨潤法等により、反応に適した細孔系分布を有する酸化カルシウムを調製しようとするものである。 本年度は、各種膨潤法のうち、水蒸気膨潤法による多孔性酸化カルシウムの調製に重点を置いて検討を開始し、酢酸膨潤法により調製した酸化カルシウム等と細孔系分布を比較した。その結果、これらの調製法によって酸化カルシウム中に3種の特徴的な細孔を構築できる事を見出した。すなわち、1.2nm, 60nm, 1-6μmの3種の孔径の異なる細孔群を構築することが可能なことが知られた。このうち、最も小さい細孔と中間の大きさの細孔は石灰石を焼成することにより得られる細孔であり、比表面積は最も小さい孔が左右する。1-6μm以上の巨大孔は酢酸膨潤法で容易に構築できる細孔である。水蒸気膨潤法では最小の細孔径を変化させることは難しいが、中間の大きさの細孔を10〜30nm広げることが可能で、同時に1-6μm以上の巨大孔も少量であるが生成させることが可能なことが知られた。さらに、水膨潤法では水蒸気膨潤と類似の効果が細孔径分布に認められたが、その効果がより大きいことが知られた。 石灰石より膨潤法を用いて調製した細孔径分布の異なる酸化カルシウムを用いて,脱SO_2とN_2O分解を試み、細孔径分布の影響を検討した。その結果、脱硫に関しては巨大孔と中間の大きさの細孔が非常に重要で、脱硫剤としての粒子強度が備われば、酢酸膨潤法が最も適していることが明らかなった。他方、N_2O分解に関しては、触媒として働く酸化カルシウムが同時に脱硫剤として硫酸塩化されるため、硫酸塩化速度が非常に速い場合、活性成分である酸化カルシウムが消失する。そこで、硫酸塩化速度が相対的に遅い、巨大孔が十分に発達していない水蒸気膨潤法で調製した酸化カルシウムが優れた触媒能を示すことが知られた。
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