昨年度までに、マクロポーラス酸化カルシウムの調製法として、酢酸膨潤法、水蒸気膨潤法、水膨潤法を見出し、マクロポアーが脱硫に対して有効であることを報告し、さらにN2O分解触媒触媒としての性能について報告した。本年度は、新たに酢酸膨潤法と水膨潤法を組み合わせた水・酢酸湿式膨潤法について検討した。さらに、近年その開発が進められている加圧流動層燃焼に対応して、酸化カルシウムが炭酸カルシウムとして存在した場合のマクロポーラス炭酸カルシウムの脱硫活性を評価した。さらに、低温乾式同時脱硫・脱硝剤としての酸化カルシウム(反応場では消石灰)の活性評価も開始した。その結果、次のような結果を得た。1)水・酢酸湿式膨潤法に関しては、酸化カルシウムの約40モル%以上になるように酢酸を添加した水溶液を用いる調製法で脱硫(脱SO2)に対して酢酸膨順法に匹敵する活性のマクロポーラス酸化カルシウムを調製できること、すなわち酢酸使用量を約60%削減できる廉価な調製法として利用できることを明らかにした。さらに、水・酢酸湿式膨潤法で調製したマクロポーラス酸化カルシウムの前駆体(酢酸カルシウムと水酸化カルシウムの混合物)は炉内に投入するまでは十分な機械的強度を有することも確認した。また、これまで見出した各種の細口径分布を持つ多孔質酸化カルシウムを用いた検討により、脱硫に適した細口径分布を明らかにした。2)多孔質酸化カルシウムが炭酸カルシウムになって反応する場合についての検討では、炭酸塩化によって脱硫剤が膨張するため、天然生石灰中のマクロ孔や、水蒸気膨潤法で調製した程度のマクロ孔は細孔が小さくなり、脱硫反応がほとんど進行しないことを明らかにした。すなわち、酸化カルシウムが炭酸塩化されても脱硫性能を保持するためには、少なくとも水膨潤法で調製した酸化カルシウム以上のマクロ孔の発達した酸化カルシウムが必要であることを明らかにした。3)低温乾式同時脱硫・脱硝に関しては、90℃付近で酸化カルシウムの硫酸塩化と硝酸塩化によりSOxとNOxの同時除去が可能であり、同時除去反応においては水蒸気の共存の影響が大きく、また、硫酸塩化と硝酸塩化は互いに独立して進行するのではなく、互いの反応が複雑に寄与しあって進行することを明らかにした。
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