生石灰は、硫黄化合物や窒素化合物の除去剤として重要な物質である。しかし、通常それらの物質の細孔は十分に発達していないため、除去容量が小さい。この問題を解決するためには、最適な多孔質生石灰の調製法の開発を進めるためにも、反応のメカニズムの解明と細孔径分布が反応速度に及ぶす影響を明らかにすることが重要である。我々は、酢酸蒸気、水蒸気、水及び酢酸-水混合溶液を用いる新しい多孔質生石灰の調製法を提案した。この調製法により、同一種の石灰石から化学的特性がほぼ同じで細孔構造のみが異なる生石灰試料を調整することが可能となった。これらの試料を用いることによって高温SOx除去用CaOの反応性と細孔構造を検討し、ミクロ、メゾ、マクロ孔が有機的に連結された細孔構造が脱SOx剤として適していることを明らかにした。さらに、高炭酸ガス雰囲気でCaCO_3が脱SOx剤として使われる場合について検討した。その結果、適切な径の細孔が十分に発達している場合、そのCaCO_3の反応性は、CaOに匹敵することを初めて明らかにした。 生石灰が石炭のガス化ガス中に含まれる硫化水素を除去するために使用される場合、脱硫の結果生成するCaSの酸化分解が必要となる。これはCaSをそのまま投棄すると水と反応して硫化水素を放出するため、それを防ぐために文化逸しておく必要があるためである。これまでは1200度付近以上で分解されている。我々は、CaSの酸化に関する詳細な検討を行い、水蒸気が共存するとその水蒸気とCaSが直接反応し、結果的に酸化分解が著しく促進されることを見出した。さらに、この水蒸気の効果を有効に利用することによって1000℃以下の低温でCaSを分解できることを明らかにした。 消石灰による低温同時脱SOx・NOxに関しては、その反応機構を明らかにするとともに、比表面積の大きな消石灰が同時除去剤として優れていることを明らかにした。
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