研究概要 |
石炭中には多種類の重金属が含まれるが,その中で特に問題となるのは,石炭中に比較的多く含まれ,有害性が高く,揮発性の高いものである。このような重金属として,ヒ素,鉛,水銀,セレン等があげられ,石炭燃焼に伴い大気中に放出される場合と,フライアッシュ表面に濃縮されその二次利用や廃棄の際に問題となる場合がある。本研究では,石炭中やフライアッシュ中の有害重金属を燃焼前(または廃棄前)に効果的に除去できるクリーニング技術の開発を行った。 昨年度に確立した石炭中重金属の正確な定量法を用い,水溶性キレート剤を用いる石炭からの重金属除去の研究を行った。EDTAなどの通常のキレート剤を用いた場合は,鉛,マンガン,亜鉛などの重金属が効果的に石炭からリーチング除去された。イオウを含むキレート剤を用いた場合には水銀が効果的にリーチング除去された。X線光電子分光による石炭フライアッシュの分析の結果,ヒ素や鉛が高濃度に表面に濃縮されていることがわかった。ヒ素は特に酸化物の水溶性が高く,フライアッシュから水相へ少しずつ溶出する傾向があった。フライアッシュをグルコン酸のようなキレート剤で前処理すると,水相へのヒ素溶出がほとんどなくなった。さらに,リーチング処理後のヒ素を含む排液を,活性アルミナ等で処理しグルコン酸を再生・再利用することや,回収したヒ素を特殊な骨材を用いるモルタル中に固定化することを検討した。活性アルミナによるキレート剤再生の基礎的検討として,活性アルミナの吸着剤としての能力やカラム処理への応用をヒ素やアンチモンの吸着挙動を通して解析した(発表論文参照)。今後は,さらに安価で効率の良いリーチング剤の開発や,他の石炭事前処理であるカラム浮選や化学的処理と効果的に結合させることも検討する。
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