研究概要 |
本年度はまず,各種微量成分に関する最新の衛星観測データ(米国のUARS)を収集・整理し,予備的な解析をはじめた.そのひとつとしてMLSデータにもとづき,上部対流圏における水蒸気量分布のグローバルな時空間変動について調べた.その結果,熱帯域における水蒸気分布は,積雲活動を通して海面水温とよい相関を持っており,エルニーニョと関連した大規模な変動を示すことがわかった. また,熱帯域における観測データの不足を補うために,以下の観測キャンペーンをおこなった. 1999年9月:サンクリストバル島におけるオゾン・水蒸気観測 1999年9月:クリスマス島におけるオゾン観測 1999年9月―10月:昭洋丸における赤道東太平洋域オゾン観測 2000年3月:サンクリストバル島におけるオゾン・水蒸気観測 2000年3月:クリスマス島におけるオゾン・水蒸気観測 これらのデータは現在解析中であるが,これまでのデータも含めて以下のような知見が得られている. 1.サンクリストバルにおける水蒸気観測データから,東部太平洋域でも3月の圏界面付近で水蒸気は飽和していることがわかった.また,9月の観測では水蒸気が未飽和であるプロファイルも得られたが,同時に観測されたオゾン濃度変動や気象データ解析の結果,これは赤道ケルビン波の下方変位位相部に当たっていて乾燥してオゾンの豊富な成層圏大気が下降してきたのを観測していたことがわかった. 2.昭洋丸でのGPS/オゾンゾンデ観測から,地表〜高度5kmほどの領域で,しばしばオゾンの少ない湿った薄い大気層が2,3つ存在することが見出された.これはちょうど北風が卓越する高度領域とも対応しており,船の北側に位置するITCZとの関連が示唆される.
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