研究概要 |
本年度は,大気微量成分に関する最新の衛星観測データ(米国のUARS)の収集・整理を継続しておこない,そのひとつとしてHALOEデータにもとづき,赤道下部成層圏の水蒸気分布のグローバルな時空間変動について調べた.その結果の一つとして,赤道下部成層圏に固有な準2年周期振動にともなう鉛直流変動を定量的に見積もることに成功した. こういった衛星データと同時に収集している客観解析データを用いて赤道東太平洋における後方流跡線解析をおこなった.クラスター解析の手法を用いることによって,季節に固有な流跡線パターンやエルニーニョ時とラニーニャ時において特徴的な流跡線パターンを抽出した. また,昨年度おこなった照洋丸による赤道東太平洋域オゾン観測データにもとづいて,運動量輸送のみならず物質輸送にも重要であることが考えられる重力波の解析をおこなった.その結果,水平伝播の特徴として北緯10度付近にある熱帯収束帯に波の起源があることを示唆するような結果かえられた. さらに,熱帯域における観測データの不足を補うために,以下のキャンペーンをおこなった.これまでの観測点に加えて,今年度はインドネシア(バンドンおよびブキティンギ)での観測もおこなった. 2000年9月:サンクリストバル島およびバンドンでのオゾン・水蒸気観測 2000年11-12月:サンクリストバル島,クリスマス島およびブキティンギでのオゾン・水蒸気観測 特に今年度は,商用の水蒸気ゾンデSnowWhiteをサンクリストバル島,クリスマス島およびインドネシアで飛揚し,その性能チェックをおこなった.サンクリストバル島では,NOAA水蒸気ゾンデとの相互比較もおこなった.現時点では,圏界面より1,2km下の高度まで測定可能ではないかと判断されるが,今後さらに改良を続け,SnowWhiteによる赤道圏界面付近での水蒸気観測を確実なものとする予定である.
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