研究概要 |
本年度は,11の「研究発表」にあるように,これまでに得た観測データおよび数値モデルそれぞれを利用した研究成果の取りまとめを主としておこなった. まず,観測データにもとづく成果としては,ガラパゴスにおける1998年9月の水蒸気観測データから,対流圏界面付近の赤道ケルビン波が成層圏の乾燥化をもたらしていると解釈できる観測事実を見出したことが上げられる.ケルビン波の下方変位と上方変位にともなう温度変化が,成層圏には入り込む水蒸気量を制限しており,ケルビン波が熱帯下部成層圏の乾燥状態を維持するための要因のひとつになっている可能性が示唆される. 次に,数値モデルをもちいて熱帯対流圏界面における気温と鉛直流の年々変動について調べた.AGCMを用いたシミュレーション結果は,観測から知られているENSOのシグナルをよく表現している.そのシミュレーション結果によると,海洋大陸上の圏界面付近が下降流域になっており,ENSOにともなって上昇・下降流域が帯状方向に移動することがわかった. 上部対流圏から下部成層圏における水蒸気の時空間変動の観測は,地球大気長期変動を占う上で不可欠である.我々は,スイス製のゴム気球搭載用の鏡面冷却型水蒸気センサー"Snow White"の改良作業と測定性能の確認作業をおこなっており,今年度は以下の観測キャンペーンをおこなった. 2001年7月:インドネシアにおけるオゾン・水蒸気観測 2001年9月:ガラパゴスにおけるオゾン・水蒸気観測 2001年11-12月:インドネシアにおけるオゾン・水蒸気観測 2001年11-12月:クリスマス島における水蒸気観測 現在,さまざまな改良作業を通して性能の向上をはかっているところである.
|