研究概要 |
本年度は,これまでに得た知見に基づきさらに広範な観測データを用いて成層圏-対流圏交換に関する解析を進めるとともに,我々が利用してきた鏡面冷却型水蒸気センサーの測定性能について取りまとめた. まず,これまでの研究からその重要性が明かになってきた圏界面付近のケルビン波活動性について,客観解析データを用いその時空間変動性について調べた.その結果,ケルビン波の活動性はおもに東半球に限定され,また北半球の冬と夏の時期を中心として大きくなることがわかった.さらに熱帯域のオゾンゾンデデータを解析し,実際に,圏界面付近のオゾン分布がケルビン波と考えられる波動によって変調を受けていることも明らかにした. 上部対流圏から下部成層圏における水蒸気の時空間変動の観測をおこなうため,これまで我々はスイス製のゴム気球搭載用の鏡面冷却型水蒸気センサー"SnowWhite"を試験的に利用してきた.他のさまざまな水蒸気センサーと相互比較することによって,次のような点が明らかになった.1)下部対流圏において,これまで一般に用いられてきたバイサラRS-80Aゾンデシステムはドライバイアスを持っていること,2)対流圏中層でしばしば見られる非常に乾燥した領域では,"SnowWhite"は極めて低い相対湿度値を観測できないこと,3)しかしながら,一般に"SnowWhite"は圏界面直下まで水蒸気測定が可能なこと. また,本年度はエルニーニョの発生が予見されていたため,それにともなう変動のシグナルがよく見えると考えられるクリスマス島での集中観測を中心に,以下の観測キャンペーンをおこなった. 2002年6,8,10,12月,2003年2月:クリスマス島におけるオゾン・水蒸気観測 2002年10月:スリナムにおける水蒸気観測 2003年1月:インドネシアにおけるオゾン・水蒸気観測 得られたデータについては,現在,解析をおこなっているところである.
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