研究概要 |
大気化学や物質循環、さらに気候の研究において、大気大循環化学モデルは重要な道具である。成層圏大気大循環化学モデルを作成し、それを用いて成層圏物質循環や成層圏オゾンなどが気候に及ぼすであろう影響を調べようとしている。これまでにオゾン反応を表す簡単なChapmann反応を組み込んだ(Nagashima et al,1998)。その後、N20,CH4,HOX,NOX,CLOXなどの気相反応系を導入してきた(Takigawa,et al.,1999)。これは、共同研究者の秋吉による1次元モデルを3次元の大循環モデルに導入したことである。今回はさらにこの化学モデルに硫酸エアロゾルを導入することを試みた。この報告では、今年度におこなった研究実績の概要について報告する。 化学天気図がよく議論されている。化学物質に関しての短期の変化予測をおこなっていこうとするものである。化学物質についての初期条件と地表emissionなどの境界条件を与えることにより、どんな変化をするか予測してみようという問題である。その応用として、大噴火後にオゾンがどんな変化をするか?が考えられる。ここでは、大循環化学モデルを用いたピナツボ噴火後の実験結果を紹介する。これまで、エアロゾルの放射効果のみを考慮した3次元モデルはあったが、大気化学まで含めそれを数年間数値積分した例は世界のどこにもない。我々のグループはこの数値実験をおこなうことが出来た。オゾン化学を含めないと成層圏の温度anomalyが大きくなりすぎる。一方オゾン化学を導入することにより、温度anomalyをよく再現することが出来た。このようにオゾンを導入しないと定量的な把握が不可能であることがわかる。
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