研究概要 |
(1)"秩序変数が不明な相転移"の解明 URu2Si2の17.5K相転移を解明するためにUの非磁性元素による置換および圧力印加に伴う弱反強磁性モーメントの変化を中性子散乱実験によって調べた。まずLa置換効果では、相転移のマクロな異常の変化と較べ弱反強磁性モーメントの現れ始める温度は非常に大きく影響されることがわかった。この結果は弱反強磁性モーメントがこの相転移の秩序変数ではない可能性を強く示唆するものと考えられる。また、圧力降下の実験から、圧力増大とともに弱反強磁性モーメントが一桁近く増強されること、また約1.5GPaにおいて不連続的な相移転を起こし3次元イジング反強磁性的な磁気モーメントの温度変化へと挙動を変えることが明らかになった。これらの結果はこの問題を解明する上でブレークスルーをもたらすものである。この結果に対して、大川はU4+の基底状態をΓ5二重項(四重極モーメントO22,Oxyおよび磁気モーメントJzの自由度を持つ)と考え、弱圧では反強四重極相、高圧では反強磁性相が出現するとするモデルを提案した。 (Ce,La)B_6系では未知の秩序相であるIV相について、常圧下および一軸応力下の精密な磁化測定を行った。常圧ではIV相に磁気異方性が見られなかった。しかし[110]方向の1軸圧力下でIV相に顕著な磁気異方性が現れた。IV相の磁気特性は通常の反強磁性転移では説明できず、1軸応力に極めて敏感な秩序序数であると言える。 (2)反強四重極転移系の磁気相図 PrPb_3について、[100]方向に加えて[110]および[111]方向の磁気相図を明らかにした。反強四重極転移温度の上昇は[100]、[110]、[111]の順に抑えられることがわかった。この結果を平均場モデルで解析したところ、反強四重極転移温度の上昇は反強四重極相において磁場誘起される反強磁性モーメント間の磁気相互作用によること、相図の異方性の説明には磁気八重極相互作用が必要であることがわかった。
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